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2023.01.23

経済学部主催特別講演会『ウクライナとロシアの現在と未来を考える』を開催しました

  2023年1月6日(金)、ウクライナの気鋭の労働経済学者オルガ・クペッツ先生(Kyiv School of Economics、Policy Professor、一橋大学経済研究所・客員研究員)と日本の経済体制論の第一人者の岩﨑一郎先生(一橋大学経済研究所・教授)をお招きし、経済学部主催特別講演会『ウクライナとロシアの現在と未来を考える』を開催しました。
 クペッツ先生による『現在から戦後へウクライナ経済を再建する道筋について』(Pathways to rebuilding Ukraine's economy from the present to post-war)の講演では、ロシアによる侵攻がウクライナに与えた人的・経済的・社会的な被害の現状について、またそこからどのようにウクライナ経済を再建するかについてお話がありました。2022年2月24日以降のロシア侵攻後、ウクライナ経済はGDPが前年に比べて3割以上減少し、2010年の6~7割にも縮小するほど、深刻な危機に見舞われています。また死亡やケガに加えて、数百万人以上の市民が国内・海外への避難を余儀なくされました。このことは、教育・就学の中断をもたらし、経済ポテンシャルに長期的にマイナスの影響を及ぼしうる深刻な問題であることが懸念されています。このような状況の中で、ウクライナ政府や国際機関がどのように協力して、国家再建に取り組もうとしているかについて説明していただきました。
 岩﨑先生による『対ロシア経済制裁の評価と今後の行方』の講演では、「ウクライナ軍事侵攻直前のロシア経済とは?」「今次経済制裁に伴うロシア経済の見通しは?」「ロシアにとって最も打撃となっているのはどの制裁手段なのか?」「制裁効果を緩和する一連の動きに対して、今後どのような対策が必要になる?」「ロシア・ウクライナ戦争の経済的帰結をどう予測する?」という5つの質問に答える形で、ロシア経済が抱える問題と現状、また制裁の有効性や今後の見通しについて説明していただきました。
 お二人の講演は、今まさに起きている世界的な一大事を分かりやすく整理し、私たちに考えるヒントを与えてくれる内容となりました。事前のアンケートによると、学生の多くは、「戦争がいつ終わるか、なぜ長期化しているのか」、「なぜプーチン大統領とロシアは戦争に踏み切ったのか」、「日本や世界にどのような影響があるか」、「制裁は有効か」について関心を示していましたが、これらの関心事のほとんどに対してこの講義は回答を示すものとなったと思います。
 また、クペッツ先生の講演は、多くの学生にとっては初めての英語の講義となりチャレンジングな試みになったと思いますが、岩﨑先生によるクペッツ先生のメッセージの解説が、その理解に大いに助力となりました。