2022.07.15
“Culture of Integrity”プログラム第3弾を実施しました
7月5日(火)、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)ウガンダ事務所の原悠祐氏をゲストスピーカーに迎え、本学法学部国際関係法学科の学生とQ & Aセッションを行いました。
本プログラムは、国際社会の最前線で活躍するゲストをお招きし、参加者が事前にテーマの背景や相手の置かれた立場を立体的に調査・理解した上で英語による質問を準備して対話に臨み、国際社会とつながる実感を育てていくことを目的にしています。今回は、日本の大学で国際法を学び(APU・高柴ゼミ卒業生)、イギリスの大学院で法学修士を取得後、OSCE(欧州安全保障協力機構)およびUNHCR(難民高等弁務官事務所)を経て、現在の事務所でHuman Rights Officerとして勤務する原氏より、国際法を実際に用いる現場からの洞察が共有されました。
冒頭原氏より、人権・人道機関が対処する課題や置かれている社会状況の理解の一助として、ウガンダの政治状況、中でも30年以上も何故同じ政権が続いているのかについて、内外の要因の説明がありました。これを踏まえ、続くQ&Aセッションでは、ゼミ3年生の質問に対する回答を敷衍する形で、1)世界で3番目に多くの難民を受け入れている(2021年統計)ウガンダにおける難民認定のプロセスと課題、2)OHCHRが行っているウガンダ国軍他との人権対話、3)鉱山資源開発をめぐる透明性・ビジネスと人権の関係、4)ウガンダでの2機関の仕事を通じて人道支援機関と人権機関が直面する課題や領域国政府との関係にどのような相違点を見出すかなど、幅広い問題について話し合われました。
最後に、国内・国外を問わず国際社会とつながる実務を目指すための「相談会」の時間も設けられ、専門分野の中から更に具体的な専門性を見つけていく方法や、困難な状況であってもモチベーションを保つ秘訣についてアドバイスがありました。中でも「国際法が国家間で用いられるだけでなく、様々な立場の人と対話を重ねることで、人々の生活レベルでも意味を持たせられる過程に携われるのが面白い」という指摘や、パンデミック下で海外活動が容易でない状況であっても、海外の大学でも用いられる第一級の教科書の読解やライティングの大切さについても指摘がありました。
参加メンバーからは、「長い報告書を読むなどして質問を考え準備を進めてきたが、やはり現場の観点が非常に勉強になった」(国際関係法学科3年 徳丸陽輝さん)、「国際的な問題はYES/NOで答えられる問題が少なく、WHYを追求することが重要だという指摘は非常に参考になった。ゼミでも頻繁に、なぜこうなるのか?このような行動を取る理由は何か?という質問がなされる。ある事象を本当に理解するにはwhyにwhyを重ねる必要があることを今まで以上に意識したい」(同 尾崎央虎さん)との感想が寄せられました。また、今回のゲストスピーカーが日本の大学を卒業後に国際社会で活躍する道を見出してきた経験が共有されることで、「『答えは現場にしかない』というメッセージがとても心に響くと共に、自分で能動的に学び、批判的思考を磨いていけば、自分の目指す場所へ行けるのではないか」 (同 笹月柚紀さん)との実感も得られたようです。
同企画を主催した高柴優貴子教授は、「現地の人々と『人権』の概念の共通理解を目指すところから始めなければならない社会状況での原氏の活動に接し、“What we are doing is just a drop in the ocean. But if that drop was not in the ocean, I think the ocean would be less because of that missing drop.”(私達のすることは 大海のたった一滴の水に すぎないかもしれません。でも その一滴の水があつまって 大海となるのです)というマザーテレサの言葉を思い出す。活動の原動力になるのがモチベーションですが、その持続のためには、まず、自分が何にワクワクするのかをよく知ることが大事なのではないか。そして、全国でも数少ない国際関係法学科を擁する本学で専門性と英語力を磨きつつ、integrity(誠実・真摯・高潔などを表す言葉)を身につけることで国際社会につながるキャリアも十分視野に入るとし、興味のある人は是非門を叩いて欲しい。」と語ります。


