【参考図書】

書籍名:
クロモフォビア 色彩をめぐる思索と冒険
著 書:
デイヴィッド・バチェラー著 田中裕介訳
出版社:
青土社
発行年月日:
2007年

【目次】

西洋では古代以来、色彩は一貫して、周縁に押しやられ、ののしられ、無視され、おとしめられてきた。著者は、このクロモフォビアの形成過程を絵画・建築・映画などの具体例を使って説明していく。色彩は原始的、幼稚なもの、そして表面的で不必要な飾りだと考えられていた。プラトンの哲学と修辞学の対立とアリストテレス派の美学における線と色彩の対立に言及。色彩は私たちを惑わし、真理を見えにくくする装飾であった。本質ではないと考えられ、次第に女性・魔力・過剰といったイメージにつながっていったのである。理性的で高次元の精神性を意味するモノクロと野生的で混とんの象徴である色彩の説明には、映画を引用している。高尚なモノクロの世界から人間世界へおちてきた天使をえがく『ベルリン・天使の詩』。色彩あふれるオズの世界から灰色の現実世界へ大冒険をするドロシーの『オズの魔法使』などである。

【レビュー】

クロモフォビア(Chromophobia)とは、ギリシャ語で「色」を意味するchromoと、「恐怖症」-phobiaが組み合わされた言葉です。作者はこの本で、西洋社会に浸透していたモノトーン(単彩)嗜好を検証しています。モノクロは高次元の象徴のようです。私は、日本でもこの傾向を強く感じ、さびしく感じることがあります。卒業式などの祝典で黒を着ている人を多く見ますし、夢のマイホームは床から天井、家具から食器に至るまで白一色という場合もあります。日本では色彩はどのようにとらえられてきたのでしょうか。さて、英語のcolorは、インド・ヨーロッパ祖語のKel(=cover,conceal「おおう、隠す」)が語源です。私は、この本で色について多くの発見をしました。皆さんもこの本を読んで、色彩を巡る冒険へ出かけてみませんか。興味があるかたはぜひ英語で読んでみてください。

クロモフォビア 色彩をめぐる思索と冒険