#11 ルワンダで学びを深める/法学部ISLプログラム
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#11 ルワンダで学びを深める/法学部ISLプログラム
法学部ISL(インターナショナル・サービス・ラーニング)のプログラムの一環で、夏休みにルワンダに約1ヶ月滞在し、ボランティアや卒業論文執筆のための研究を進めた@Yukiさん。ルワンダへの関心は、大学2年生の時に見た映画「ホテルルワンダ」を見たことで、ルワンダのジェノサイドに興味を持ったことがきっかけ。実際に現地で見たこと、感じたことについて、お伺いしました。
法学部ISL(インターナショナル・サービス・ラーニング)のプログラムの一環で、夏休みにルワンダに約1ヶ月滞在し、ボランティアや卒業論文執筆のための研究を進めた@Yukiさん。ルワンダへの関心は、大学2年生の時に見た映画「ホテルルワンダ」を見たことで、ルワンダのジェノサイドに興味を持ったことがきっかけ。実際に現地で見たこと、感じたことについて、お伺いしました。
この記事に登場するSEINAN PEOPLE
@Yukiさん
法学部国際関係法学科4年
高柴優貴子教授のゼミに所属
本日はよろしくお願いします。国際関係法学科の出身ということで、まずは、こちらの学科を選択された経緯について簡単に教えてください。
@Yuki 昔から「正義」ということに興味があり、政治学か、経済学か、法学かで考えた時に、法学の観点から考えることが一番自分に合っていると感じたので、国際関係法学科に進学しました。大学入学後は、現在のゼミの先生である、高柴先生に出会えて、良かったと思っています。「こんな素敵な先生がいるんだ!」と。現在は、ルワンダのジェノサイドについて、卒業論文の執筆に取り組んでいます。
今回、法学部でインターナショナル・サービス・ラーニングが4年ぶりに実施されたとのことですが、プログラムに参加されたきっかけを教えてください。
@Yuki 初めは、ジェノサイドについて勉強したくても、現地ではすごいタブーだからなかなかできない、また、ナーサリーでの支援・活動の仕方に疑問を感じる、というような行き詰まりを感じていました。
ーその疑問や行き詰まりとは、具体的には?
@Yuki ナーサリーで子供たちと遊んだり、お母さんたちとご飯の準備をしたりすることはとても、楽しかったのですが、現地の子供たちは支援に良くも悪くも慣れてしまっているような違和感を感じました。私はこの子供達が今日この瞬間だけ笑顔になることよりも、この子供達に相応しい明日が将来があるように、言ってしまえばこの瞬間に嫌われてもいいから何かしたいと思っていたので、今回行っている支援が根本的な解決になるのだろうかと思い、悩んでしまいましたね。
また、ナーサリーでのお母さんたちとの会話でジェノサイドに触れることは難しく、日々の活動にそれを結びつけるのは一層難しい課題でした。
前半の活動では、活動に対する行き詰まりを感じていたとのことですが、どのように克服されましたか。
@Yuki 私としては、ルワンダに来ること自体が一つの目標だったのですが、そう言った中でも、必ずやろうと決めていたことは、全部のジェノサイドメモリアルを訪れることです。あと現地のアートを楽しむことぐらいですね。
ほとんどの休日はルワンダにあるすべてのジェノサイドメモリアル、博物館や教会を訪れました。あらゆるメモリアルに行ってみると、それぞれに人々に伝えようとしているメッセージ・ナラティブがあり、とても新鮮で面白かったです。
例えば、博物館に行くと、展示の入り口に、簡単に何が起きたか説明しているリストがあるのですが、私は、ジェノサイドについて、「誰」が「何」をしたという観点で見て回っていて、全てのメモリアルで共通していたのは、よく知られている「フツ」が「ツチを殺した」という理解とは違って、当時の「政府」が「虐殺を計画した」と書いてあったことです。これまで表面的に見えていたものが、現地を訪れることにより、より深く理解し、真実に近づくことができました。
そうするうちに、ナーサリーで働く人たち、主催者側、一緒に活動してた仲間が私が本気でジェノサイドを勉強したいという意欲を知って、手伝ってくれるようになりました。
今回のルワンダの活動を経て、@Yukiさんの将来に、どのような影響を与えましたか。
@Yuki 私は現場で一人一人に向き合うだけでなく、全体を俯瞰して問題にアプローチしたいと思うようになりました。
支援する立場を分類すると、現場で一人一人と個別に向き合って活動する立場、全体を俯瞰して見て考える立場の二つがあると考えていて、それらが上手く融合することで支援に繋がると思います。
ルワンダに行くまでは、私は前者のように、現場で働きたいのかなと思っていたのですが、現場に行ってみたらすごく逆で、先ほどお伝えしたように、すごく違和感を感じたんです。今は良いかもしれないかもしれないけど、子供達の未来を考えると本当に解決に繋がるのかと思うと、帰って研究や卒論を進めたくなるぐらい、やっぱり私は、問題を俯瞰して見て、みんなで話し合って、解決に繋げる職業に携わりたいんだと気づきました。
卒業後は、スイスの大学院に進もうと思っています。そこの大学院では、ジェノサイドなどの紛争や人権侵害の後の社会が直面する問題に対処するためのアプローチや手法を学ぶ「トランジショナルジャスティス」という専攻があるので、そこで、今研究していることを、より深く学びたいと考えています。
大学院卒業後は、大学院のあるジュネーブが国際機関の中心なので、そのまま現地の国際機関でインターンするなり、就職したいと考えています。
最後に、西南生の皆さんに向けてメッセージがあれば、教えてください。
@Yuki 私自身も完璧な人間ではないので大それたことは言えないのですが、「経験していないことさえも経験に変えてみて」と伝えたいです。
ある新聞記事で、「経験の欠如ではなくて、欠如の経験」という言葉を見たことがあります。妊婦さんの不妊治療で悩んでいるお話だったのですが、お母さんになる経験ができなかった人に対して、お母さんからするとお母さんにはできない経験であって、そういう形で、別々の経験を持った人たちが一体となって、みんなで子育てをする、社会をよくしていくという話で、この話は何でも当てはまるなと思っています。
私も小さい時に思い描いたような完璧な理想の人生ではないんですけど、今では、「小さい頃に描いた理想の人生を実現できなかった自分」という今の自分を大事に思ったりもします。
今回の私の経験を聞くと、みんな海外に行かないとといけないんだ、留学しないといけないんだと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、留学しなかった自分は、留学に行くと経験できないことなので、焦らずそんな今の自分だからこそ考えられること、感じられることを大事にするのも大切じゃないかなと思います。