[おじいちゃんの知恵袋]ショートの実験 |
おじいちゃん
大変です.爆発しました.家のコンセントに二本の導線を結び,小さな豆電球 を繋ぐと光ったので,豆電球なんて,フィラメントの部分だけだから,抵抗に したら大したことないだろうと思い,それならばと,今度は二本の導線の間に, 抵抗なんておそらく無いであろう針金を繋ぐと,ショートしてボンと爆発し, びっくらこいた.針金は溶けて,火の玉になりころころと畳を転がり,危うく 火事になるとこだったよ.おかげで,焦げた畳を大家さんに見つらんように, カッターで表面を削り,えらい仕事を作ってしまった.
ジェーンはそれを横目に,バカじゃないのと言う顔で,「ショートするのは当 たり前じゃない,学校で習わなかったの.」と自信満々でお説教.
と,言うことで,何でただ2本の導線繋いだらショートするのに,豆電球だと ショートしないの? これは,1オームの微少抵抗でもショートしないのかな あ? それとも,ある程度の抵抗でエネルギーを殺さないとだめなの?
教えてくれーー!
おじいちゃんへ
さて,この間のショートの一件だけど,良く考えてみたら,中学校でやったオー ムの法則で説明できるんだね.I = V / R だから,R = 0 で,I は無限大にな るんだね.しかし,電流が針金に無限大に流れると,なぜ針金だけが溶けるの だろう? 導線や,その他部屋内に張り巡らされている線は何ともなくて,針 金だけが溶けた.まあ,針金が一番熱を持ちやすいと言えばそれまでだから, その疑問は飛ばしたとしても,なぜブレーカーが落ちなかったのだろう? 不 思議だ.電流は実際には無限大にはならないのかなあ?
I = V / R なら,たとえ V が小さくても R = 0 なら I は無限大になるよね え.それじゃあ,小さな単3電池でも針金でショートさせると針金は溶けるの かなあ? それとも,乾電池が爆発するとか? おじいちゃん知ってる? 実験 してみようか? もちろん今度は外で! でもどこでやろうと乾電池が爆発した ら怪我するか......
おじいちゃんのアドバイスを待とう.
1)細い導線が瞬時に燃えたのは、屋内の配線がそれより遥かに太かった為、 他に影響なく導線のみが極度に発熱、空中の酸素と化合し燃えた。 電気工事の屋内配線は法規上直径1.6mm以上とされている。君の実験した線が0.5mmとすれ ば、1.6の2乗:0.5の2乗=10.24。 屋内配線の抵抗は実験の導線の抵抗の約10の1となり、屋内配線には影響はなくてよかった。 尚、配電函のブレーカーが落ちなかったのは、ブレーカーの容量が20Aだから助かった。 もっと太い線で実験していたら当然ブレーカーはおちていただろう。
2)豆球について
豆球のフィラメントは抵抗の高い物質、(タングステンを主体にした)で作ら
れていて、しかも極細い構造になってい、しかも長さを得るためコイル状にし
て抵抗を高く保っている。従って豆球は100Vの電圧にも小さな電流しか通らない。
2Wattの球には0.02Aの電流。ワット=E×I。ところが豆球を常温でテスターで
抵抗を計って見ると10〜20Ω位しか示さないと思う。
計算上では、100v÷20(Ω)=5(A) となり、ワット数は500Wにもなってしまう。
この矛盾は、抵抗の温度係数を考えるとわかる。
総ての導体は温度の上昇に伴い抵抗が大きくなる性質を持っている。
豆球内のフィラメントもその例に漏れず、通電と共に電流の2乗×抵抗 ジュールの熱で
急激に加熱され、抵抗は上昇し、電流は減少し、規定の値に落ち着く。そしてフィラメント
は白熱状態になって光を発し、我々の要望を満たしてくれる。
これが君の実験のように空中で行われれば、瞬時にフィラメントは焼滅してしまうだろうが
そこはよくしたもので、球内は真空、燃えたくっても酸素はない。そこで安定がある。
と、いうわけ。 またね。