2004(平成16)年 度 前期試験問題

科 目 : 手続法入門         担当者:

試験月日: 9月9日 木曜1時限   受験者数:463名

次の事例に関して、手続法入門で学んだことをふまえて、適宜論点を指摘し、解説・論評せよ。

1.

  1) マスコミにもよく登場する某大学のA教授(男性)が、9月2日午前10時、地下鉄西新
駅発車直後、Bさんに腕を掴まれた。その際、A教授が抵抗したために、A教授の腕に、
少しあざができてしまった(刑204条参照)。Bさんは、銀行員である。Bさんがいう
には、「この男(A教授)は、鏡で、女性のスカートの中からのぞいていた。」とのこと。
実際、A教授の足元には、手鏡が落ちていた。あわてたA教授は、「違う。違う。」とい
っていた。(後日、A教授は、「テレビの収録があったので、手鏡を持っていただけ。」
と話している。)その後、A教授は、無理やり、藤崎駅の駅長室に連れていかれ、2日午
後3時、警察官とともに、福岡西署に連れていかれた。4日午後2時、ある女性がA教授
の前にあらわれた。その女性は、「検察官」と名乗っており、「痴漢行為は、県の条例で、
犯罪とされているのですよ。」といっている。
  2) 14年前に、地下鉄の中で毒ガスを散布する、という事件があった。その件は、Cなる団
体の組織的犯行という疑いが強く、裁判でもそのことが認められている。同時に、当時の
福岡県警本部長が狙撃され、あやうく死亡しかける、という事件もあり(刑199条参
照)、後者については、犯人は不明のままであった。ところが、およそ一月前に、福岡西
署は、Dを、本部長狙撃事件の犯人として逮捕した。しかし、10日前に、Dは釈放された。
Dは、かつて、Cなる団体の幹部だったことがあり、県民には不安も強い。一部の人は、
「なぜ、殺人鬼を野放しにするのだ。」と警察を非難している。
2. Pさんの父親Qさんが亡くなった。QさんはR会社を経営しており、RがG銀行から1000
 万円の融資を受ける際、Qさん個人として保証人になっていた。加えて、Qさんの自宅の改
 修費用として、QさんはR銀行から 200万円の融資をうけ、Pさんがその保証人になってい
 た。G銀行は、Qさんの唯一の相続人Pさんに、1,200万円の支払いを求めている(民89
 6条参照)。Pさんがそれを拒否すると、裁判を起こす、とのこと。
  1) Pさん自身、都心に家を持っているのだが、家族もいないひとりものの気安さからか、
「刑務所にいく気はないし、銀行に家をとられるのもいやだ。しばらく放浪してくる。5
年もすれば、銀行もあきらめるだろう(商522条、民147条参照)。」といっている。
  2) 友人の勧めで、放浪することはやめた上、相続放棄(民938条、939条参照)をし
たPさんは、「裁判所に行って相続放棄をしたことだけ話して、あとは放っておく。」と
いっている。
  3) G銀行は、「Qさんが亡くなった直後、Qさんの銀行口座からお金が引き出されている
が、お金を使ったのは、Pさんだ。」と非難している(民921条1号参照)。そして、
ATMのカメラにうつっていたSさんから証言を求めたいといっている(民訴190条)。
しかし、Pさんは、2)のとおり、裁判所に出ていかないつもりである。また、友人のSさ
んを裁判所に行かせることもしたくない。
  4) 友人の勧めに従い、裁判所で自分の言い分を主張することにしたPさんは、裁判所で、
「自分は、お金を使っていない。」と反論することにした。他方、R社の借金は、R社の
新社長のTさんが全部支払ってしまい、TさんはPさんに、「もうご心配いりません。」
と話している。G銀行は、Tさんのことについては、何も言わない。Sさんは、裁判所に
呼び出されるだろうか。
 2.については、生活笑百科(NHK総合。2004年9月4日 12:15放送)にヒントを得ました。
 注:設例はフィクションである。根拠となる条文を示しつつ、説明すること。書き込みのな
い六法のみ持ち込みを許可する。A評価の答案のうち特に優れたものを、WWWで公表す
ることを考えている。公表を希望しない者は、その旨、答案用紙に明記されたい。