2003(平成15)年 度 前期試験問題

科 目 : 手続法入門         担当者:

試験月日: 9月18日 木曜1時限   受験者数:427名

 何者かが、とある小学校に侵入し、多数の児童が刃物で刺される、という事件が起こり、そ
の結果、被害者の児童数名が死亡した。

1. その犯人は、学校関係者によって取り押さえられ、1時間あまり学校の一室に閉じ込めら
 れた後、警察に引き渡された。この、学校の対応について、「何の罪もない児童を殺したよ
 うなやつは、警察に引き渡す、などというまだるこしいことをするのではなく、その場で刺
 し殺してやればいいのに。こんなやつは、どうせ、死刑だろうから。」という意見をいう人
 がいた。その犯人には、その後の裁判で、実際に、死刑判決が言い渡された。
 これらの経緯、および上記の意見につき、論評せよ。その際、現行法について一般的に理
 解されている(と私が考えて授業で話した)内容にそって説明した後、あなたの意見を、解
 釈論、立法論にわけて述べること。

2.亡くなった児童たちの遺族が、犯人に対して、損害賠償(民709参照)を求めて、裁判
 を起こした。

  1) 犯人は、そこそこ財産を持っているのだが、遺族の提起した裁判をまったく無視して、
何の対応もしない。遺族は、その不誠実な態度に、いたく立腹している。犯人としては、
1.の裁判が終わった後に、あらためてゆっくり対応すればいい、と考えているようである。
法律的にはどうなるか。論評せよ。
  2) 途中で気が変わった犯人は、2.の裁判に出てきて発言を求めた。
a. 従来から、児童の通っていた小学校に恨みがあり、そのことを、るる、主張したいら
 しい。そして、10年前の小学校の態度を調べるために、当時の校長から証言を求めたい、
 といっている(民訴190参照)。裁判所は、このような主張、証拠調べの要求に対し、
 どのように対処すべきか。ちなみに、犯人は、「どうせ、死刑になるのだから、言いた
 いことくらい言わせろ。」といっている。対して、遺族は、犯人が責任逃れをしている
 ようで、不快である。
b. しばらくして、犯人は、亡くなった児童たちが、いかにいやな子どもか、具体的に主
 張しだした。。曰く「日頃から、自分の家柄を自慢して、私(犯人)を馬鹿にして、つ
 ばをはいたり、ののしたりしていた。」遺族としては、そのような子どもに育てた覚え
 はなく、まったく心当りがない上、亡くなったわが子を冒涜されているようで、極めて
 不快である。犯人のこのような発言を、裁判所は制止すべきか。証拠調べの要求(例え
 ば、その現場を見た、犯人が考えている近所の人から証言を求めること)についてはど
 うか(民722IIに言及すること)。
 注:設例はフィクションである。根拠となる条文を示しつつ、説明すること。書き込みのな
い六法のみ持ち込みを許可する。A評価の答案のうち特に優れたものを、WWWで公表す
ることを考えている。公表を希望しない者は、その旨、答案用紙に明記されたい。