2002(平成14)年 度 前期試験問題

科 目 : 手続法入門         担当者:

試験月日: 9月12日 木曜1時限   受験者数:258名

A、B、Cの3人が、次のような話しをしている。Cの発言は、すべて正しいものとする。
手続法入門の講義で学習したことを踏まえて、論評せよ。

A「ねえねえ、ビッキーの話し、聞いた?」C「一年前に離婚した喜劇女優のビッキーのこ
と?」B「あぁ、あのブスのトーテンポールのひとり?」C「ブスかどうかは、好みの問題
でしょ?で、ビッキーがどうしたの?」A「ビッキーの元夫がビッキーに保険をかけて、暴
力団にビッキーにけがを負わせることを依頼したんだって」B「それはすごいね」A「でも
、その組員が別件でつかまって、ビッキーの件も自白したんだって」B「そういえば、ビッ
キーの元夫が福岡空港でつかまった、っていう記事が九州スポーツに載っていた」C「傷害
(刑204)の共犯(刑61)になるね」A「でも、逮捕状はなかったらしいよ。国際線ロ
ビーでウイスキーを飲んでいるところをつかまったらしい」B「へっ?そんなことが許され
るの?」C「授業で習ったよ」A「それにしても、ビッキーの元夫は、悪いやつだな。すぐ
に死刑だよね」C「そう簡単にはいかないよ」B「そう言えば、元夫のお母さんが、お金が
なくて弁護士を頼めなくて困っている、って書いてあった」C「年老いたお母さんにとって
は、かわいい息子だからね」A「悪人には、弁護士なんて、いらないんじゃない?」C「無
茶言うなよ」B「お金がないときには、国がめんどう見てくれるんじゃないの?」C「裁判
は、まだ始まっていないんだろ。それより、弁護士会に相談にいけばいいよ」A「何、それ
?」C「おいおい、授業中、寝てたの?」
C「ところで、元夫は、なんでそんなことしたの?」B「借金に困っていたらしい」A「ビ
ッキーにも『夫の借金は妻の借金」といって取立に来ていたようだよ」B「ギャンブル?」
A「ほとんどはそうだけど、子どもの教育費も借りていたらしい」B「一時、ビッキーに仕
事がなかったときがあったからね」A「で、ビッキー相手に裁判になっていて、子どもも法
廷に呼び出されるかもしれないんだって」B「えっ、ビッキーは何も、警察に捕まるような
ことはしていないんじゃないの?」C「警察沙汰になることと裁判は必ずしも同じではない
よ」A「でも、借金の名義はすべて元夫だったらしいよ」C「その場合でも、ビッキーにも
支払義務がある場合もあるからね」B「子どもはどうして?」C「きっと、証人だろうね。
教育費のことの」A「ビッキーは、子どもを巻き込むことを嫌がっているみたい」C「ビッ
キーの対応によって、証人として呼ばずにすむ方法はあるよ」B「どうして?誰にでも証人
義務(民訴190)があるんだろ?」C「先生、授業中、力を入れて話していたよ」
A「ビッキーと言えば、最近、お父さんがなくなったね。多額の借金を残して」B「ビッキ
ーの亡父の債権者は、ビッキー相手に裁判を起こすみたい。『親の借金は子どもの借金』と
いうわけ」C「親がなくなった場合には、半分、本当だからね」A「でも、放棄すればいい
でしょ。授業で先生が言ってたよ」B「債権者に言えばいいの」C「違う違う。でも、Aの
言う通り、正規の手続を踏んで放棄をすれば、原則として、親の借金を子どもが支払う必要
はない」B「だったら、正式に放棄して、亡父の債権者からの裁判は無視すればいい」C「
でも、それだと、放棄したことは、裁判所でとりあげてもらえないよ」B「何で?」C「先
生、泣くよ」A「だったら、放棄したことだけ裁判官に電話で話して、あとは無視すれば?
」C「電話じゃ駄目だよ。それに、亡父の債権者が、あることないことでっちあげる可能性
があるから、裁判に出席して、きちんと反論すべきだな」A「でっちあげ、って、保証人と
か?」C「それだけじゃない」B「でっちあげなら、気にしなくていいんじゃないの?」C
「その点も、先生が力をいれて話していたよ」A「ビッキーは、最近売れているから、忙し
いんじゃない?」B「マネージャに行ってもらえばいいよ」C「だめ」
A「それにしても、ビッキーは、最近、災難続きだね」B「それが、『一時は人間不信にな
りましたが、考えてみれば、これも、芸の肥やしです』と言ってたよ」C「さすが、吉木の
芸人は鍛え方が違う」B「それに、再婚の話しもあるみたいだし」A「そう、それはよかっ
た。ヒッキー同様、幸せになってほしいね」
 注:設例はフィクションである。根拠となる条文を示しつつ、説明すること。書き込みのな
い六法のみ持ち込みを許可する。A評価の答案のうち特に優れたものを、WWWで公表す
ることを考えている。公表を希望しない者は、その旨、答案用紙に明記されたい。