2001(平成13)年 度 前期試験問題
科 目 : 手続法入門 担当者:
試験月日: 9月20日 木曜1時限 受験者数:
A、B、Cの3人が、次のような話しをしている。Cの発言は、すべて正しいものとする。
手続法入門の講義で学習したことを踏まえて、論評せよ。
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A「ねえねえ、SNAPの四郎ちゃんの話し、聞いた?」C「四郎ちゃんが中州で路駐して
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いたのを、警察官にみつかって、車を強引に発進しようとして、道行く人にけがをさせた(
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刑法204条)、という、あの事件?」A「そうそう。ショックぅ〜〜」C「四郎ちゃん、
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すぐに捕まっちゃったよね」A「四郎ちゃん、かわいそう〜〜。令状いらないの?」C「授
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業でちゃんと習ったよ。でも、四郎ちゃん、すぐに釈放されたよね。警察や検察は、身柄を
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拘束し続けたかったようだけどね。」A「有名人だから、特別扱い?」C「そんなことない
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よ。何でも捜査当局の思い通りになる、というわけではないからね。これも授業で習ったよ
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。」A「四郎ちゃん、裁判にかけられるの?そうでないと、被害者は納得しないだろうから
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。」C「一応、別問題だよ。ところで、Bは、今日は静かだね。」B「実は、その場にいた
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んだ。」A「うっそぅ〜〜」B「ほんと。すごい騒ぎだったよ。でも、災難だった。」A「
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どうしたの?」B「『人殺しぃーー!!』という声がするので、行ってみたら、人が倒れてい
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て、その横で、服が血だらけの人、Pさん、ていうんだけど、そのPさんが立っていたんだ
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。」A「で?」B「で、Pさんにむかって、『待てっ』て言ったら、Pさんが逃げるんで、
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追いかけて行って捕まえたんだ。」A「すごい。お手柄。」B「違うよ。Pさんは、倒れて
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いた人を助けようとして、それで血だらけだったんだ。犯人じゃないんだけど、私の顔が怖
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かったので、とっさに逃げたんだって。」A「笑っちゃうね。」B「笑えないよ。Pさん、
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怒っちゃって、『警察に訴える』って言ってるんだ(刑法220条参照)。『私は、犯人じ
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ゃない』って。」C「Pさんを捕まえた後、どうしたの。」B「もちろん、授業で習ったよ
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うにしたよ。その後、Pさんは、すぐに釈放された。」C「だったら、大丈夫だよ。」B「
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『損害賠償も払え』って(民法709条参照)。」A「すぐに釈放されたんでしょ?」B「
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精神的に傷ついたんだって(同710条参照)。」C「その点も大丈夫。でも、裁判所から
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呼び出しが来たら、必ず、対応しないといけないよ。」B「えっ、裁判になるの?さっき、
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警察沙汰にはならない、って言ったじゃない?」C「それは別問題。」A「でも、お金を払
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う必要がなければ、無視してもいいんじゃない?せめて、試験が終わってからにするとか。
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」C「駄目だよ。」B「弁護士頼むのはお金がかかっていやだな。Cに代わりに裁判所に行
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ってもらおうか。よく勉強しているから。」C「私は、まだ学生だよ。駄目だよ。これくら
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いなら、自分でやったら。」B「えっ、自分でできるの?」C「授業で習ったよ。」B「自
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信ないから、先生に頼んで、裁判官を紹介してもらって、あらかじめ、事情を説明しておこ
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うか?」C「駄目だよ。」A「あの先生、頼りにならないかな?」C「そういう問題じゃな
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いよ。」B「四郎ちゃんも裁判に来るかな。」A「えっ、ほんと?」B「だって、Pさん、
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しきりに、『悪いのはSNAPの四郎だ。』って言っていたから。」A「そうか。誰でも、
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証人義務があるので、裁判所に行かなければいけない、って、習ったよね。民訴法190条
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だっけ?」C「それはそうだけど、裁判所は四郎ちゃんを証人として呼ばないと思うよ。」
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A「どうして?犯人はPさんではなく、四郎ちゃんだ、というのは、問題の本質じゃない?
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だから、Pさんは、それを証明しようとするでしょ。」C「違うよ。」B「いずれにしても
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、私もいい迷惑。傷ついた。」A「いっそのこと、Bが四郎ちゃんを訴えたら?」C「えっ
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?訴状にうそ書くの?」A「いいや。でも、Bがごたごたに巻き込まれたのも、元はといえ
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ば、四郎ちゃんが悪いんでしょ。」C「確かに、四郎ちゃんのやったことはよくないし、B
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も傷ついたのはそうかもしれないけど、四郎ちゃんの行為とBのゴタゴタとの間に、因果関
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係がないよ。」A「でも、四郎ちゃんの肉声が聞けたらそれでいいじゃない。来なければ来
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ないで、お金がもらえるし。」C「別に、被告本人が来なくても、弁護士を代理人にすれば
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いいんだよ。それに、被告側が欠席したからといって、裁判に負けるとは限らないよ。」B
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「どうして?四郎ちゃんの住所は調べればわかるよ。」C「それでも同じ。」
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注:設例はフィクションである。根拠となる条文を示しつつ、説明すること。書き込みのな
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い六法のみ持ち込みを許可する。A評価の答案のうち特に優れたものを、WWWで公表す
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ることを考えている。公表を希望しない者は、その旨、答案用紙に明記されたい。