1996年度(前期)裁判法 期末試験
1. Xは、血友病を患っており、血友病の権威であったA医師の治療を受けていた。ところが、最近体調を崩し、検査を受けたところ、HIVに感染し、エイズを発症していることがわかった。幸い、症状の安定しているXは、なぜこのようなことになったのか納得がいかず、友人Fの協力を得て、その原因を調査した。すると、A医師によって投与された非加熱製剤によってHIVに感染したようであることがわかった。さらに、A医師は、非加熱製剤の投与を継続すれば、高い確率で患者をHIVに感染させたうえ、その多くにエイズを発症させることを予見しえたにもかかわらず、漫然と非加熱製剤の投与を継続した疑いもでてきた。また、厚生省の担当部局の(当時の)M課長も、非加熱製剤の危険性を認識していたにもかかわらず、薬事法によって厚生大臣に与えられている回収命令等の権限の行使や、医療機関への情報提供等の措置をとることなく、漫然と事態の悪化を見過ごしてしまった、との疑念もある。
Xが法的救済をうけるため、あるいは、関係者の法的責任を追及するために、Xには、どのようなことが可能であり、どのようなことをしなければならないか。また、Fには、どのようなことが認められているか。
2. あなたの友人は、海外旅行をするために、消費者金融業を営むS信販からお金を借りて、旅行に出かけた。帰国後、アルバイトをして返済するつもりであったが、病気になってしまい、アルバイトを続けられず、返済のめどがたたない。S信販からは矢のような催促で、とうとう裁判所から、支払命令なるものが届いた。不安に思ったその友人は、大学で法律を勉強しているあなたに相談にやって来て、「このさい、手持ちのお金を全部競馬ににつぎこみ、大穴をあてて、借金を返済する。」などと言っている。
どのような、法律的なアドバイスをするか。
注 上記の設問のすべてに答えること(裁判法の試験問題であることを忘れないように。なお、設例はすべてフィクションである)。
根拠となる条文を示しつつ、制度の全体像を説明しながら、個々の論点に答えること。
書き込みのない六法のみ持ち込みを許可する。
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