2003年度(後期)民事手続法II 期末試験

1. Gは、Sに 1,000万円を貸し付けていたところ、最初のうちは、約束通りの返済が行われていたが、2年前から、一切返済が行われていない。Sは家を所有しているので、それを売却して、残金の支払いを行うことをGが求めたが、Sは、思い出深い家を手放すことに、なかなか踏み切れないでいる。そこで、Gは、Sに対して、強制的な支払いを求めたいと考えている。どのようにすればよいか。借用証を警察に持参すればよい、という話しを耳にしたが、本当か。

2. S所有の家には、新築時、SがH銀行から住宅ローンを借り、その際、H銀行のために抵当権が設定されている。登記簿によると、抵当権設定は、1994年10月1日。借入金の額は、 1,500万円。20年ローンであり、きちんと返済されていても、まだ半分残っていると見込まれる。銀行への返済が残っている物件は、売れない、といううわさもある。Gは、あきらめなければならないか。ちなみに、登記簿には、Hの抵当権以外の登記はなされていない。

3. そうこうするうちに、Sは、札幌に転勤することになった。そこで、この機会に、この家をMに貸し、その家賃で、Gへの返済を行う、という解決案をGに示してきた。(長期金利が2%と仮定して)家賃は、月5万円とのこと。Mは、人間的にも経済的にも信用できる人物の上、Sの家の周辺の建物売却価格は、ここのところ下がり続けているにもかかわらず、家賃は、だいたい相場通りである。Gは、この解決案を受けてもいいと思ったが、家を他人に貸すと、いざというときに、売れない、という話しも聞く。法律的にはどうなるか。

4. Gが、Sの解決案を受け入れようと思ったところ、こんどは、Mが話しを渋りだした。Mとしては、小学校に通う子どもを転校させたくないので、10年程度は住み続けたいと思っており、強制的に退去させられるのは困る、とのこと。そもそも、Mの責めに帰すべき事由がないにもかからわず、Mが強制的に退去させられる、ということが、法律上認められているのか。Mのために、何か、対策はないか(2003年の法律改正前と法律改正後の双方について述べること)。

5. 家の処理の問題がなかなか進まないため、Gは、Sの他の財産をあてにしたいのだが、Sは、自分の財産の状態を明らかにすることに、気が進まないようである。Gのとりうる対策はないか。

6. 5.の対策の結果、Sの父親がうけた勲章があることがわかった。Gの知人の話しでは、この勲章なら、200万円で買ってもいい、とのこと。Gとしては、どうするか。

7. 5.の対策の結果、B銀行に、300万円の預金があり、また、Sは、友人Fに200万円のお金を貸していることがわかった。B銀行は、正規の法的手続を踏めば、Gに対して支払う、といっており、Fは、Sにしか支払わない、と言い張っている。ちなみに、Fも、生活が苦しいらしい。そうこうするうちに、Sは、G'金融からも100万円借りていることがわかり、G'金融も、B銀行とコンタクトをとっている、とのことである。早急に少しでも借金を返してもらいたいGとすれば、どうすべきか。
 
 

注:すべての設問に答えること。設例はフィクションである。根拠となる条文を示しつつ、説明すること。書き込みのない六法のみ持ち込みを許可する。A評価の答案のうち特に優れたものを、WWWで公表することを考えている。公表を希望しない者は、その旨、答案用紙に明記されたい。
 

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