1996年度(後期)民事訴訟法II 期末試験
1. 父を亡くしたXが、その四十九日の法要に出席する旅費のため銀行に預金を下ろしに行くと、支払いを拒否された。どうやら、仕送りを送金してもらっていた銀行預金が差し押さえられたらしい。聞けば、父が生前、Yから借金をしていて、Yが父を相手に裁判を起こし、勝訴判決を得ていたのだが、暫くは様子を見ていた。しかし、いつまでたっても払ってくれないので差押におよんだ、とのこと。Xは、今後どうなるのか不安である上、a) 父の借金のため、父の銀行預金ではなく、なぜ、自ら必死でアルバイトをしてためた定期預金も含まれる自分の銀行預金が差し押さえられなければならないのか。b) しかも、いきなりXの言い分も聞かずに差し押さえられなければならないのか、という点につき納得できないでいる。さらに、遺品の中から、Yの領収書とおぼしき古い書類が出てきたので、この借金はすでに返済されていることも考えられる。
相談受けたあなたは、Xに対し、どのように説明し、どのようにアドバイスするか。(70点)
2. 次のような場合、Xは、Yに対して、どのような態様の民事執行を行うか。(30点)
1) 金融機関Xが、郊外の農地を宅地化した上で、その上に賃貸アパートを建設したいというYに、当該土地の上に抵当権の設定を受けたうえで、建設資金を貸付けたが、バブル景気の崩壊により、Yは、借入金の元利の返済ができなくなってしまった。近くに大学が新設されたこともあり、アパートにはそこそこ住人が入居しているが、近年の不動産市況の低迷のため、Yの唯一の財産ともいえるアパートや底地の売却の見通しは立たない。
2) 暴力団Y組が、マンションの一室を購入し、組事務所として使用している。当該マンションの他の住民Xが生活に不安を感じ、Yに対して、暴力団事務所としての使用の差し止めを求め、勝訴した。
3) Yは、Xから土地を借り、自ら倉庫を建てて使用していた。ところが、Yは倒産し、夜逃げしてしまった。地代も入らなくなったXは、Yに対して、建物(倉庫)の収去と土地の明渡しを求め、勝訴した。
注 上記の設問のすべてに答えること。
根拠となる条文を示しつつ、制度の全体像を説明しながら、個々の論点に答えること。
書き込みのない六法のみ持ち込みを許可する。
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