1995年度(後期)民事訴訟法I 期末試験
Xは、Yから、西新のマンションと別府の別荘を購入したが、Yが引渡に応じないため、訴訟を提起することにした。
1. まず、マンションの所有権がXに帰属することを根拠に、マンションの引渡請求訴訟を福岡地裁に提起した。その後、別荘の所有権がXに帰属することを根拠に、別荘の引渡請求訴訟を大分地裁に提起することはできるか。マンションの売買契約に基づく引渡請求権を根拠に、マンションの引渡請求訴訟を大分地裁に提起することはどうか。
2. Xは、いったん別荘の引渡請求訴訟を大分地裁に提起したのだが、別荘については、当分裁判で争うことはやめにしようと考えた。問題点を指摘せよ。
3. 福岡地裁におけるマンションの引渡請求訴訟の訴状で、Xは、マンションの売買契約の存在を主張したが、Yは、一切口頭弁論に出席しない。その場合、裁判所はどのような処置をとることになるか(落とし穴に注意!)。
4. 証拠調べの結果、確かにマンションの売買契約は締結されているが、他方、代金の支払いがなされていないようである。もっとも、代金について、Xはノー・コメントであり、Yは出席しない(のでノー・コメント)。この場合、
1) 裁判所は、Xに対して、代金の支払いを命じることができるか。
2) 裁判所は、Yに対して、無条件でマンションの引渡を命じるべきか(民法の関連条文も指摘すること。ただし落とし穴に注意!!!)。
5. Xに対してマンションを引き渡すべきことをYに命じる判決(前訴判決)が確定した後、Yは、当該売買契約は、錯誤によるものであって無効である、との証拠を入手した(と考えた)。そこで、Yは、Xを被告として、マンションの所有権の確認を求める後訴を提起したいと考えている。可能か。前訴判決において、引渡と同時に、Xの所有権の確認もなされていた場合はどうか(いずれの場合も、結論を根拠付ける法的根拠と同時に実質的根拠にもふれよ)。
6. 5.と同様の前訴判決が確定したのち、Xはマンションの所有権をZに贈与した。そこで、ZがYに対して引渡を求めたところ、Yは、Zに対しても、売買契約の錯誤無効を主張している。Zは、Yからマンションの引渡を得るためには、再度、XY間の売買契約の存在を立証しなければならないか。
注 上記の設問のすべてに答えること。
根拠となる条文を示しつつ、制度の全体像を説明しながら、個々の論点に答えること。
書き込みのない六法のみ持ち込みを許可する。
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