2000年度(後期)国際民事手続法 期末試験

 あなたは、日本に本社のある、航空会社Y社の法務部の従業員である。Y社の、福岡−沖縄間の便が事故を起こした。幸い、死者は出なかったが、乗客のXが重傷を負った。Xは、A国の住民で、たまたま、日本に旅行に来ており、福岡の営業所で航空券を購入し、事故機に搭乗したのである。Xは、なんとか本国に帰国できる状態にまで回復したため、帰国した。

 ある日、あなたは、上司に呼ばれ、「Xが、A国の裁判所で、わが社(Y)を被告として、損害賠償請求訴訟を提起した、という知らせが、A国にあるわが社の支社から、今日、連絡があった。」と聞かされた。

 そこで、以下の問いに答えよ。

 ちなみに、A国の民事手続法は、すべて、日本の民事手続法と同一である(従って、A国の民事手続法に言及する必要がある場合には、便宜上、日本の民事訴訟法、民事執行法等の条文、判例等に言及すること。ただし、A国の法令として言及しているのか、日本の法令として言及しているのかを、明確にされたい)。



1. A国にあるY社の支社では、この訴訟に対応することができない。そこで、上司は、何とか、A国での訴訟を放置できないものか、あなたに相談してきた。あなたは、どう考えるか。

2. A国には、Y社の資産はほとんどない。そこで、上司は、「どうせ、とられるものも何もないから、放置しておこう。」と言っている。どう考えるか。

3. 数日して、上司は、「事前に、日本の裁判所で、何らかの手をうつことができるらしい、という噂を耳にしたが、具体的にはわからない。」といいながら、あなたに相談してきた。どのようなことが考えられ、本件の場合、Y社のおもわく通り、うまくいくものか否か、あなたはどのように考えるか。


注 すべての設問に答えること。
  設例はフィクションである。
  根拠となる条文を示しつつ、説明すること。
  書き込みのない六法のみ持ち込みを許可する。
  A評価の答案のうち特に優れたものを、WWWで公表することを考えている。公表を希望しない者は、その旨、答案用紙に明記されたい。

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