全九州大会参加報告書


                 第49回全九州学生商経ゼミナール 大分大学大会

                       主催 大分大学経済学部ゼミナール連合会

  

                                                 平成17年12月3・4日                                                   
                                                  小川浩昭ゼミナール









1.内容
(1)日時:平成17年12月3日・4日
(2)場所:大分大学
(3)参加部門:社会福祉部門
   テーマ:社会保障制度について
   助言講師:石井まこと
   議長:松堂新也
副議長:庄司奈津子
書記:松迫彩佳
   参加パート:
・大分大学 安田ゼミ
「1970年代以降の各国の福祉国家の比較と日本の社会保障制度について」
   ・大分大学 佐藤ゼミ
    「社会保障制度について」
・九州産業大学 井沢ゼミ
    「どうする日本の社会保障!!」〜日本とスウェーデンの国際比較から〜
   ・西南学院大学 小川浩昭ゼミ
    「福祉国家における三大疾病」
     青山・阿部・岡村・古賀・下川・白石・高橋・鳥居・村川・吉丸
                           (全10名出席/50音順)

2.報告要旨
(1)安田ゼミ
  2章立て。第1章は英・独・瑞・米を取り上げて、各国の社会保障の特徴、問題点を挙げる。第2章では日本の福祉国家化の過程と現在までの経過を説明し、その後高齢化と年金改革、生活保護と家族政策についてふれ、まとめとして福祉国家は縮小ではなく拡大の方向に進めるべきだとの結論づけ。
(2)佐藤ゼミ
 5章立て。第2章で介護保険と介護の問題、第3章で失業と雇用、少子化についてふれ、第4章で日・米・加・瑞の年金制度を挙げ、年金の給付体制、財源、徴収の仕方など更に改善すべきであると述べる。第5章では結論として、日本の社会保障制度や考え方は未だ発展途上であるため、国民の負担や財源構成のあり方について国と国民が一緒に考えるべきであるとしている。
(3)井沢ゼミ
 4章立て。第1章で日本の社会保険制度の現状について述べ、第2章でその問題点と影響を指摘。第3章では、スウェーデンの社会保障を取り上げて、第4章において今後の社会保障制度は、年金制度の受益と負担のバランスをとることによる国民負担率の抑制、世代間の不公平の是正、制度に長期性と柔軟性を持たせること、福祉国家として成功した国を研究することで日本独自の社会保障制度改革を行うこと、国民への情報提供とその理解を得ることが必要であると結論づけている。
(4)小川ゼミ
 5章立て。第1章で少子化と高齢化、グローバル化を福祉国家における三大疾病と位置づけ、第2章では高齢化に伴う財政問題、第3章では少子化の現状と展望、第4章ではグローバル化の対応策について述べている。第5章では社会保障のための財源確保の手段として増税を挙げ、福祉目的税として消費税率を上げることを提案。高齢化、少子化、グローバル化という3つの問題の解決のための改革には、国民の負担増が不可欠であると結論づける。

3.質疑応答
(1)安田ゼミの論文について
・国民年金の空洞化、空洞化による不信感、職業の違いによる保障の格差を解決するために具体的に何をすべきか。→厚生年金と国民年金の一元化を行う。ただし、低い水準での一元化になるという問題点もあるとの回答。
・年金制度について、未加入者や未納者を減らすためにはどのような政策を採るべきか。→日本の社会保障に対する国民の合意を十分なものとする。懲罰の導入も考慮に入れるべきではないかとの回答。
・家族政策や労働政策における充実した保障とはどのようなものか。また、その保障のための財源はどう確保するのか。→家族政策とは児童手当等を指し、労働政策とは雇用対策等を指す。これらをさらに充実させる。財源は増税によって賄うしかないのではとの回答。

(2)佐藤ゼミの論文について
・国の策定指針に拘束されない地域のニーズにあった計画作りとは、具体的にどのようなものか。→未回答。

(3)井沢ゼミの論文について
・社会保障政策の決定過程における透明性と選択性の向上のために具体的にどうすべきか。→国民の政治への更なる参加を促すとともに分かりやすい情報の提供を行うとの回答。
・なぜ自助・公助を増やすとモラルハザードが生じるのか。→未回答。
・ドイツとタイの社会保障制度を取り上げた意図は何か。
→ドイツは社会保険の始まった国であり、また、どちらの国からも日本が学ぶことはあるのではないかと考えたとの回答。

(4)小川ゼミの論文について
・財政・人口構造・経済の変化に対して起こる問題について、これらをどう解決すべきか。 →財政については、増税という手段における国民の負担増、人口構造の変化については、増税により確保した財源を使っての少子化対策の強化、経済の変化については、少なくとも最低限のセーフティーネットを維持することによって福祉国家の恩恵を享受できない人をつくらない。これについての財源も増税によって賄うと回答。
・日本独自の型とは何か?
 →アメリカ型・ヨーロッパ型というようなものに捉われないものであり、財政に与える負担や国民への負担と受益のバランスを考えた、ある程度高福祉・高負担である福祉国家であると回答。

4.小論点・大論点に関する討論
(1)小論点1
社会保障制度の改革として、少子化、高齢化にどのような政策が採られるべきか
●少子化
・小川ゼミ→女性が社会参加する上で育児が足枷とならないよう保育所の増設、ファミリーフレンドリー企業の支援、手当の拡大が必要であると主張。
(質問)国の負担が増えるがどう賄うのか?→福祉目的税の導入。
・井沢ゼミ→他国を参考として日本独自の福祉をつくるべきであると主張。基本的には小川ゼミと同意見であると思われる。
・安田ゼミ→全意見に賛成。
・佐藤ゼミ→助言講師の意見に賛成。
・助言講師→働くスタイルに柔軟性を持たせてはどうか。

結論:福祉目的税の導入による少子化対策の拡充が必要。
(具体的な政策は小川ゼミ以外からは特に出ず。)
●高齢化→議論できず

(2)小論点2
グローバル化による大企業の経済支配、貧富の格差、産業空洞化にどう対応すべきか
→議論できず。

(3)大論点
少子化、高齢化、グローバル化への解決策とそのための財政問題をどうすべきか
・小川ゼミ→福祉目的税としての消費税増税という方法による国民の負担増が避けられないと主張。
・井沢ゼミ→負担増が避けられないことについては小川ゼミと同意見。ただし、国民の理解を十分に得るべきであると主張。
・安田ゼミ→小川ゼミ・井沢ゼミと同意見。
・佐藤ゼミ→特に発言せず。

結論:国民の理解を得た上での増税を行う。

5.感想
 設定したテーマが広すぎ、各ゼミで調べた内容が異なっていたために質問とその回答に時間がとられて、論文に基づいた議論がほとんどできずに終わった。同じ理由からお互いに質問したことに対しての回答がすれ違ったり発言ができないゼミがあったりと、なかなか議論が活発にならず、最終的に結論がでないまま終わったことが残念だった。また、日程や論文の変更等があったことについて議長団が理解できていなかったこともひとつの原因であるとは思うが、特に手際の悪さ、進行のまずさが気になった。質問書にある質問をこなすことに一生懸命で、質問に対しての回答を行っている途中にも関わらず、また後で議論するといって議長団がさえぎるため結局回答が中途半端なまま終わったり、時間が足らずに小論点・大論点に関する議論ができなかったりして、何のための大会なのかわからなかった。 ただし、1つのテーマについていろいろな面から深く考えたということ、議論の中で他大学の学生の意見に触れ、様々なものの見方や考え方があることが実感できたことが収穫であったといえる。

                                                             以上