「古典文学」なんて看板を掲げていると、あちらこちらの市民講座や愛好会の方々から度々お呼びがかかります。参加者の皆さんはとても楽しげで賑やかで、教室には、こちらが一を話すなら十以上も質問が返ってきかねない「熱気」が満ちています。そういう空間は心地よいですね。学ぶ楽しみを熟知した達人たちとの知的バトルに毎度ワクワクしています。
さてそういう皆さんに、「昔から古典がお好きでしたか?」と尋ねてみると、「いえ私は文法が苦手で…」と苦笑まじりに頭を掻く方が必ずいらっしゃいます。「いつも語釈に追われて…」とおっしゃる方も多いですね。古典も「勉強」となると敷居が高いのでしょうか。
一方で、学生諸君に「昔話やお伽話の想い出」を尋ねてみると、古典嫌いを自称する学生君の口からも、浦島だのかぐや姫だの瓜子姫だの、たくさんの物語が絵のイメージとともに紡ぎ出されます。「その話なら絵も描けるくらい覚えてます」と言う学生君もいました。ご存じのように、いずれも古典文学に根ざすお話ですね。「古典嫌い」ではあっても、ちゃんと古典に親しんでくれていたわけです。思えば、家族の皆さんや学校園の先生方、さらにはボランティアの方々が行って下さった「絵本の読み聞かせ」が、豊かで温かな古典体験を守ってきたのでしょう。子どもたちは、絵を見つめながらお話を聞き、お喋りを交わしながら、立派に古典を心に刻んできたのだと思います。
実は、絵や絵巻物を用いた物語の伝承は古くから行われていました。お坊様や巫女さんが行った「絵解き」と呼ばれる芸能がそれです。私たちの研究室では、「絵解き」の手法をコンピューターによって現代の教室に再現し、絵とお喋りを通じて「古典に親しむ」学習プログラムを開発しています。
たとえば「源氏物語絵巻」という古絵巻にも、デジタル機器を駆使すればいろいろな仕掛けを施すことができます。色褪せてしまった画面がたったワンクリックで出来た当初の色彩を取り戻すならば、それだけでもハッと感動しそうでしょう?いわば「とびだす絵巻物」ですね。さまざまな仕掛けに導かれて楽しく詳しく画面を観察しながら、ちょっと知的なお喋りやクイズが楽しめるというわけです。そういう遊びの後で読む古文は、いっそう生き生きとしたものになる筈です。現代の絵解きを通して、古典・古文が親しみやすいものになることを願っています。
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