SEINAN SPIRIT

No.217 2021 summer
MY ANSWER 外国語学部外国語学科清宮 教授 商学部経営学科 三井准教授

社会や時事問題に関する素朴な疑問に、
2人の教授が答えます。
それぞれの専門領域から導き出された
「マイアンサー」とは?
きっとあなたの知の扉を
開いてくれるはずです。

人は、何のために働くのですか?

外国語学部外国語学科 清宮教授の MY ANSWER

外国語学部外国語学科 清宮教授

「個性は変わらないもの」という先入観を捨ててみよう。

 社会心理学を土台とするコミュニケーション研究では、個性は「パーソナリティ」として古くから研究されてきました。パーソナリティとは個人の「性格」のようなもので、パーソナリティも性格も長い間変化しないものと考えられていたことから、個性もあまり変化のない静的な性質と捉えられてきました。
 では、パーソナリティではなく「アイデンティティ」の立場から個性を考えてみるとどうでしょう。アイデンティティとは、「自分とは何者か」という自我を意味し、社会や人間との関係の中で生み出されます。そのため、相手との関係性によってアイデンティティは変化します。例えば、先生と恋人では演じるキャラが違うように、その人との関係性で生まれたアイデンティティにふさわしい振る舞いや行動を取り、そのほとんどは無意識に行われます。
 「個性とはアイデンティティである」と考えるならば、個性はパーソナリティのような個人に帰属する変化しない特徴でなく、人間関係によって変化する多様かつ多面的なものといえます。大勢の前だとおとなしいけれど、友人同士ではおしゃべりな人も、どちらもその人の個性なのです。
 また、個性は自分を言語化することで現実として表われ、どのような言葉を使い表現するかによって、形作られる個性も変化します。例えば、「おとなしい、ひかえめ」という表現と今風の「陰キャラ」では、与える印象や生まれるコミュニケーションが違うのはもちろん、自分自身のキャラの演じ方も違いますよね。つまり、相手との関係性がまず先にあり、その中で作られるキャラを言語化し、個性を演じていると私は考えます。
 学生の皆さんの多くは、「個性は、その人に備わった性格でずっと変わらないもの」と思っていたのではないでしょうか。しかし、私は個性とは他者との関わりの中で作られ、多様に変化するものだと考えます。これからは、個性を一面的に見るのではなく、多面的に変化するものであると認識することが重要です。

一つ一つの出会いを大切にして自分自身を振り返ることが、
個性を見つけるきっかけに。

 学生の皆さんは自分自身の個性をどのように捉え、どのような言葉で表現しますか?「自分の個性が見つからない」という人は、ぜひとも異なる文化に接してください。できれば、短期でも良いので、日本の外に出て、世界を見てきてください。そして、文化的な多様性を尊重すること、自分と異なる考えや価値観を尊重することを学んでもらいたいと思います。これらの経験こそ、コミュニケーションを通じて得られる貴重な財産であり、皆さんの個性の形成に大きく寄与することでしょう。
 また、一期一会という言葉がありますが、人や仕事など一つ一つの出会いとその関係性を大切にしてください。その出会いと関係性を振り返り、自分自身を振り返ることで新たなアイデンティティや個性を発見できるはずです。

商学部経営学科 三井准教授の MY ANSWER

商学部経営学科 三井准教授

他者と「同じ」「違う」は、見方次第で変化する。

 私が研究する「マーケティング」をベースに、「個性」とは何かを考えてみます。マーケティングでは、ビジネスの対象を決める際に「セグメンテーション」という行程を必要とします。これは、同様の消費傾向を持つ消費者を同一グループとすることを指し、換言すると、異なる消費傾向を持つ消費者をグループ分けする作業です。
 セグメンテーションで重要になるのが、グループ内の「同質性」とグループ間の「異質性」です。グループの作り方は、扱う製品・サービスによって異なるのはもちろんですが、同一の製品・サービスであっても、分析する側の視点によって変化します。例えば、2人の消費者が真っ白のTシャツを購入したとします。行動だけを見れば、同じ消費傾向に見えますが、見方を変えれば、一人は「白色」が好きで、もう一人は「無地」が好きなのかもしれません。
 私は、人間の持つ特性とは、このような同質性と異質性が混在したものであり、ある側面から見れば、他者と「同一」「一致」でも、視点を変えれば、「異質」「相違」とも捉えられるものだと考えています。
 近年、教育現場や就職活動において、「個性」という言葉をよく耳にするようになりました。その多くは、個性における「違い」の側面を強調したものであると感じています。その影響からか、「ヒトと違わなければならない」と思い込んでいる学生も少なくありません。しかし、前述のように、人間の持つ性質は見方次第で同質性の側面も、異質性の側面も照らし出されます。つまり、個性とは「一致」と「相違」の集合体であると捉えることができます。そう考えると、「個性」という言葉と付き合いやすくなるのではないでしょうか。

経験自体に違いを求めない。
経験の中での感情や思考に目を向けてみよう。

 「自分は個性がない」「ヒトと違う経験をしていない」。自分自身をこのように評価する学生もいると思います。しかし、個性とはあくまでその人を形作る思考や行動、経験などの集合体であり、それらは当然、人と違うこともあれば、同じこともあるでしょう。重要なことは、それをいかに「自分ゴト」として消化できるか。つまり、自分を形容する要素として言葉にできるかではないでしょうか。
 大学4年間で、必ずしも他人と違う経験をする必要はありません。その経験をするに至った経緯や動機、経験によって感じたこと、学んだこと、さらにはその経験を経て自分がどのように変化したかなどを、自分の言葉で表現したものが『個性』になっていくのです。
 「自分は個性がない」と思っている人は、自らの経験を振り返り、「なぜ、そう考えたのか」「なぜ、そう感じたのか」と、「なぜ」を掘り下げてみてください。その中で見つけた感情、思考を言葉にすることが個性を見つけるきっかけになります。また、一つ一つの経験にしっかり向き合い、ヒトと違うことも、同じことも自分の個性として大切にしてほしいと思います。

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