2019.07.05

法テラス福岡の講演会(新入生歓迎講演会)が開催されました。

 2019年7月5日(金)、本学チャペルにおいて新入生歓迎講演会が開催されました。講師には、法テラス福岡・スタッフ弁護士の工藤舞子氏・植竹克典氏をお招きし、「法テラスと私~司法アクセスの改善を目指して」という演題でご講演いただきました。

 法テラス(日本司法支援センター)は、「全国どこでも法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会の実現」という理念の下に、国民向けの法的支援を行う中核的機関として2006年に設立されました。本講演会では、法テラスの業務内容や司法アクセスの課題について、自らの体験や事例を交えてお話しくださいました。

 工藤氏・植竹氏はまず、人々が法的問題を抱えながら法的解決にたどりつかない要因として「司法アクセスの壁」があることを指摘されました。「司法アクセスの壁」には主に、①情報(正しい情報が分からない)、②場所(近くに弁護士がいない)、③お金(弁護士費用が払えない)の3つの壁があるそうです。これらの司法アクセス障害を克服するために法テラスが誕生しました。具体的な業務内容としては、①情報提供業務、②民事法律扶助業務、③司法過疎対策業務、④犯罪被害者支援業務、⑤国選弁護等関連業務、⑥日本弁護士連合会受託業務があります。これらの活動によって、「司法アクセスの壁」はかなりの程度、解消されたそうです。
 他方、工藤氏・植竹氏は、これらの活動により、司法アクセスの問題が全て解消されたわけではない、とも述べられました。たとえば、相談するのが恥かしいといった「心理的障壁」や、そもそも弁護士への相談が必要だと気づかないあるいは相談に赴けないといった「高齢者・障がい者」に関する課題が残されているそうです。そのため、法テラスのスタッフ弁護士は現在、福祉・医療・行政と連携し、それらの方々への支援(司法ソーシャルワーク)にも精力的に取り組んでおられるとのことでした。

 私がこの講演会の中で特に印象に残ったことは、法テラスの「司法過疎対策」(弁護士ゼロワン)に関する取組みと「司法ソーシャルワーク」に関する取組みです。「弁護士ゼロワン」とは地方裁判所の支部単位で弁護士登録のない地域と1名しかいない地域のことです。1993年当時、弁護士ゼロワン地域は74か所でしたが、法テラスの司法過疎対策などにより、弁護士ゼロ地域はなくなり、弁護士ワン地域は1か所だけになりました。司法過疎が物理的に解消されていくのは、ひいては心理的障壁の解消にもつながっていくため、とても重要な活動であると感じました。また、超高齢化社会が進む中、「司法ソーシャルワーク」のように、スタッフ弁護士が、自ら法的援助を求めることが難しい人々に対してアウトリーチし、福祉機関等と連携しながら「生活の立て直し」まで視野にいれて包括的に援助されていることも、大変有意義な活動であるように感じました。

 本日の講演会を通して、法テラスの活動により、「いつでもどこでも法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供を受けられる社会」が実現されつつあること、また、法律が社会で機能するには、単に法律が「ある」だけでは足りず、それを「届ける」ための活動が必要であることを強く実感しました。今後、法律を学んでいくさいには、その法律を人々がよりよく利用するためにはいかなる制度的仕組みが必要かといった問題についても探究していきたいと思います。

記:田古里実希(法学部法律学科3年)