日本古代の社会と文化の考古学的研究
弥生時代から平安時代を対象に、社会・生活・文化などの問題を考える。考察にあたって、それぞれの時代の人びとが残した物質的資科(遺跡・遺構・遺物)を用い、また同時代の中国を中心とする東アジアの社会・生活・文化を重視している。
歴史は文字で記録されることが多いが、古くなればなるほど記録が少なくなる。文字の無い時代であれば、記録は望めない。また事柄によっては記録されないことも多い。ところが物質的資料は、人びとが書き残した記録(文献史料)と異なり、無数にある。だから研究の材料に事欠くことはない。

私のゼミは比較考古学とよばれる分野の学問を扱っている。ここでは資料のもつ要素・内容の時代的・地域的・目的などの相違、あるいは資科の新旧などを利用して、文化の変遷や移動などを考える。その比較は日本の社会・生活・文化などの形成や発展に与えた東アジアに及ぶ。たとえば、弥生人の日常生活を自らは説明しない物質的資料で復原するには限度があるが、漢の人びとが描いた画像資料は同時代の確実な資料として活用できる。

このように考古学では物質的資料が大切になるが、それらの資料を理解する、つまり歴史を引き出すには一定の基礎知識が必要である。その方法は授業、個人的な読書、そして実体験から学ぶことになる。身体を動かしながら研究を進める考古学に興味をもつ人はまず研究室に来て欲しいと思っている。
1年次ではできるだけ考古学関係の「地域文化基礎演習」と「比較文化論」を受講すること。関連科目では「地誌学」、共通科目では「日本史学」「東洋史学」「日本文学」「中国文学」など。2年次では私の「文献講読」と専攻科目の「考古学」はもちろん、「日本文化史」「日本史概論」「東洋文化史」「中国史」「文化人類学」「日本民俗学」など幅広い選択が望ましい。3・4年次では私の「演習」に加えて「東洋古典思想」「東洋日本美術史」「日中比較文化論」などを薦める。また将来博物館学芸員をめざす学生は博物館学芸員課程の科目を選択する必要がある。
「弥生の食」「弥生の祭りと動物たち」「玄界灘沿岸地域の木製農耕具とその意義」「日本における文身習俗」「装飾古墳について」「沖ノ島古代祭祀遺跡とその盛衰」「古代日本の色」「古代日本の服飾について」「耳飾りにみる装身具の消滅」「藤原京と平城京」「道教と古代日本」「琉球の城(グスク)について」「陶磁器から見る江戸時代の日欧交流」「日本人と銭湯のかかわり」「博多祇園山笠」「中国少数民族からみたお茶の歴史」「日本神話と考古学」「日本古代の音文化」「日本伝来馬と中世の戦闘馬術について」「日本の服装と抗争史」
大学・大学院で考古学を学んだ後に、福岡県立の九州歴史資料館で大宰府史跡の調査研究を担当していた。この間に博物館学芸員資格を取得した。この関係で、1990年に西南学院大学に転じてからは、考古学と博物館学を担当している。なかでも、弥生時代の社会構成の解明、それに多くの影響を与えた東アジアの交流史を、研究の中心的なテーマにしている。学外での活動も積極的に行っており、主なものでは九州国立博物館の建設に関わっている。なおキリスト教主義の大学の教員にはふさわしくないかもしれないが、実家は太宰府市の観世音寺で、住職をしている。
田中琢・佐原真
『考古学の散歩道』(岩波新書、1993)
考古学を考える方法、考古学でわかることはいろいろある。そこで、実際にどのようにして考えられ、何がわかってきたのかを具体的に知りたくなった時、本書がエピソードをまじえてやさしく解説してくれる。

高倉洋彰
『金印国家群の時代一東アジア世界と弥生社会一』〈青木書店、1995)
日本列島に生きた人びとが古代(弥生時代)に積極果敢に波濤を越えて行った国際交流の実態を考察している。この交流によって、列島独自の縄文社会はアジア的な弥生社会に変革していくが、日常生活の面 での変革については、別に『交流する弥生人一金印国家群の時代の生活誌一』(吉川弘文館、2001)がある。

考古学の入門書・専門書
『新版古代の日本』(角川書店、全10巻)、『図説発掘が語る日本史』(新人物往来社、全7巻)、『古代史復元』(講談社、全10巻)、『歴史発掘』(講談社、全12巻)、大塚初重・戸沢充則他『日本考古学を学ぶ』(有斐閣、全3巻)、坂詰秀一.森郁夫『日本歴史考古学を学ぶ』(有斐閣、全3巻)、『岩波講座日本考古学』(岩波書店、全9巻)、『東アジア世界における日本古代史講座』(学生社、全10巻)など。