

「法学部出身者はツブシが効く」といわれます。それは、法学部で身につける「法的な思考力」と「社会的技術」が多くの仕事に応用できるからです。そこで以下の各ページでは、法学部卒業生の方たちに、今どのような仕事をしているかなどについて、後輩へのメッセージとして語っていただきました。
[1995年以前は、法律学科だけなので卒業年のみ表記。96年以後は、国際関係法学科新設により○○年法律(または国関法)卒と表記します。]
座談会1は、1969年から94年まで本学教員として法曹の育成に努められた堤弁護士を囲んで、「西南法曹会」(西南学院大学出身の裁判官・検事・弁護士で構成)の方たちに懇談していただきました。司会は新進の波多江弁護士にお願いしました。

出席者 (2000年11月30日、福岡市中央区大名にて)
堤 克彦 堤克彦法律事務所 弁護士、本学名誉教授
八尋八郎 八尋八郎法律事務所 弁護士
坂田米雄 福岡地方検察庁 検事
松岡茂行 松岡茂行法律事務所 弁護士
一瀬悦郎 ジャスト法律事務所 弁護士
中山栄治 不二法律事務所 弁護士
大庭康裕 大庭法律事務所 弁護士
光安正哉 佐藤・林法律事務所 弁護士
波多江愛子 ジャスト法律事務所 弁護士(司会)
担当事件の重さを実感しながら、思うようにできないジレンマの毎日ですが、今日は先輩方にいろいろ教えていただきたいと思います。
− 私は弁護士の仕事を初めて2ヶ月。担当事件の重さを実感しながら、思うようにできないジレンマの毎日ですが、今日は先輩方にいろいろ教えていただきたいと思います。

(左から 坂田さん、堤さん、八尋さん)
刑事事件と民事事件
− 皆さん民事も刑事もなさるのでしょうか。
松岡 刑事はやらない、という人もいるでしょう。逆に、刑事しかやらないという人はいない。
大庭 刑事事件だけでは事務所の経営は成り立ちません。だから、民事事件をやらないという人はいません。刑事事件は経済的にも、精神的にも非常に負担が大きいので、やらないと言う人もいるでしょうね。
坂田 ただ、国選事件があるし、全国に先駆けて当番弁護士制度を実施した福岡ですから、刑事事件に全くタッチしないという人は圧倒的に少ないでしょうね。
光安 私は昨日、対馬の法律相談センター(弁護士がいないので弁護士会から派遣される)に行きました。筑豊の方に行く人もいます。こういう制度は弁護士の負担も大きいのですが、弁護士の少ない地域の人にもリーガルサービスを提供しようというわけですから、頑張らないと。八尋先輩は少年事件に深く関わってあり、その大変さを考えると、もうボランティアですね。
八尋 この頃は事件とは別に、あちこち話に行きます。呼ばれると嫌とは言えず、全国各地に出かけていくことになる。坂田さんも逆の立場ではあるが、少年問題にかかわってこられましたよね。
坂田 福岡県弁護士会が当番弁護士制度から、更に少年事件の全件付き添いを行うという方針を打ち出し、弁護士の皆さんはこれから一層大変になりますね。

(左から 光安さん、波多江さん、中山さん)
− 民事事件で大変なことはどんなことでしょうか。
松岡 ともかく人の暮らし全般に関わるのだから、世の中のこと、社会生活すべてに亘って理解することが必要になります。そして、人の話を聞いてやることです。依頼者は、いろいろ話すけど、肝心のことは曖昧だったり、自分の都合の悪いことは弁護士にいわなかったり(笑)・・・思ったより大変です。
大庭 悩みや不満は山ほどあるけど、それが法律的にどういうことかについて分かっていない人が多いのだから。そういった人たちとの会話の中から、法律的な問題点を選び出すのが本当に大変です。
一瀬 弁護士といえば裁判と思っている人がまだ多いけど、実際は、契約書を作ったり、もめごとを裁判ではなく交渉や調停で解決したり、裁判以外の仕事が多いのです。
八尋 どのみちもめ事がなくなるわけではないけれど、裁判をしなくても済めばそれに越したことはないでしょう。裁判すれば一件落着ということでもありませんし‥‥。
弁護士の財布
− 私は仕事を始めたばかり。弁護士になっても、誰がどの位収入があるのか、自分は将来どのくらい稼げるようになるのか全く想像もつきません。そこで、弁護士の収入は、どれ位なのでしょうか。
堤 ひとそれぞれ。大都会と田舎でも違うし、仕事の仕方によっても違う。
中山 昨年、日弁連のアンケート調査が行われていましたが、1000通ぐらいの回答で、収入が3800万、経費が1200〜1300万。残りが課税対象になる。日本でも次第に法人化が進んで、大規模組織の法律事務所が増えていくでしょう。

(左・松岡さん、右・坂田さん)
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会社の問題
− 皆さんは、企業の顧問などを多くなさっているのでしょうか。
堤 人によりますね。顧問弁護士が居ることは、小さな会社にとっては、取引先との関係で一種のステイタス・シンボルというところもあります。しかし、今はあまり仕事もないのに顧問弁護士を置いておくという企業は減っています。
中山 顧問料は最低月5万円〜10万円ですが、法律相談は1件30分くらいで5千円。とすると、企業の方も経費節減を考えるようになる。
松岡 特定会社の顧問になると、どうしても敵対するような企業の仕事は引き受けられなくなる。中規模都市で弁護士の数が少ないところでは、弁護士の方でも、顧問を引き受けるわけにいかなくなります。

(左・中山さん、右・一瀬さん)
司法試験と勉強
− 私は,大学3年次頃司法試験の勉強を始めたのですが、受かったのは確か27歳の時でした。受かった時は「長い間、よく頑張ったね。」といわれたんですけど、初志を貫徹したというより、止めるに止められなかったというのも正直な所です。司法試験には落ちて、でも、就職活動の時期は終わっていたし。就職氷河期でもありましたし、皆さんはどうだったのでしょうか。
一瀬 自由な雰囲気の大学で思い切り遊び、おもむろにやったから、合格までに6年もかかりました。(笑)
中山 司法試験の勉強に一旦のめり込んでからは、普通の就職をする気持ちは起きなかった。「いつになったら受かるんだろう」とは誰しも思うでしょう。今年も失敗したら‥‥、いつまでこんなことをやるのか?って。
堤 やめるにやめられないというのは男も女も一緒よ。だから頑張る。

(左・八尋さん、右・大庭さん)
− 大学の勉強と司法試験の距離は大きかったですか。
中山 私は夢破れての西南入学だったので、当時は大学に求めるものは何もありませんでした。司法試験を受けようと思ったときから、自分で勉強しました。講義に出るよりも図書館で勉強する方が良かった。司法試験に合格した後で思ったことですが、授業料を払ってもったいないことをした、一般教養などもう少し講義に出ておけばよかった、と思います。
堤 今、大学を卒業して社会に出て就く仕事は様々です。社会のニーズは非常に多様です。それに応じてどこでも使える人間を育てるのが法学部の教育であれば、一般の法学部卒業生の能力と法曹に求められる専門能力との間にどうしてもギャップが生じます。
一瀬 新入生向けの「法曹の世界」を担当してみて、西南の学生は真面目なので、やれば受かると思いますよ。ただ、受けよう、合格したいという気持ちが生まれるか、ということが問題です。法曹を志すのは、どこかに専門能力を使って他人の役に立ちたいという気持ちがあるからでしょう。女子学生も、波多江さんのように頑張って欲しいですね。
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法律事務所で働く
下野さんと重松さんは同じゼミ出身の先輩と後輩。中央区天神の和智法律事務所で、机を並べて弁護士の事務補助をしています。2人と同様に、福岡の法律事務所では、多くの本学法学部出身者が事務員として働いています。
(写真は左・重松さん、右・下野さん)
下野 希久子 00年法律卒
法律事務所の仕事は、ワープロを打ち、書類を揃え、裁判所へ提出したりなどの法律事務のほか、電話応待、接客、スケジュール管理など秘書的な仕事もあります。守秘義務や一字一句とてミスが許されないことなど厳しい面もありますが、反面、それが責任感を持たせ、やりがいを感じさせます。
事務所は天神・西通りに面しており、ショッピングにも最適です。仕事が比較的早い時間に終わるため、趣味や習い事など、自分の時間を持つことができるので、私生活でも充実しています。
重松 舞子 01年法律卒
法学部で学んだといえども、法律事務所の仕事は?だらけ。しかし、先輩の下野さんに助けてもらいながら毎日頑張っています。
法律事務所での仕事は決して派手ではない、弁護士の補助的な仕事ですが、自分がした1つ1つに意味があり、人の役に立っていると思えば、とても誇りに思える仕事です。
困っている人の力になれる仕事です
波多江 愛子 弁護士 93年卒
私は昨年の秋弁護士登録をしました。
実際に弁護士として仕事を始めてみると、思い描いていた生活とは違っていました。思うように時間がとれない、思うように書面が書けない、思うように話が出来ない、ジレンマの連続です。
でもそんな中でも、やはり困っている人の力になれるというこの仕事は魅力的です。司法試験受験時代は毎日図書館通いで社会から隔絶された生活をしていましたので、社会の中でかつ社会に少しでも役に立っていると感じることができるのは、単純に嬉しいです。
大学生活は、自分を見つめ直したり、自分の将来について考える十分な時間と材料を提供してくれる場です。皆さんも、この貴重な時間を大切に有意義に使ってください。
■模擬裁判と法廷教室
模擬裁判は、学生が原告と被告(時には裁判官も)に分かれて、教師が作った架空の事例で裁判をするシミュレーション科目。事例に関連する判例や解釈論を調べた上で、書面作成や弁論を行います。これに必要な施設が模擬法廷です。そのため、現在建設中の新1号館に法廷教室が作られています。これで臨場感を持って、弁論の練習ができます。
模擬国連安保理や模擬サミットのような交渉シミュレーション形式の授業にも対応できるように、傍聴席と組み合わせて円卓形式も可能となるように設計されています。 |
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■ロースクール問題とは
大学教育と法曹になる司法試験のレベルの間のギャップのために、受験予備校に通ったり何年も受験勉強を続けるという歪んだ状態がある。それを克服するために、法曹志望者に実務教育を行う専門大学院がロースクール。最終的に、法学部教育とどのようにリンクするか、既存大学院とどういう関係になるかなど不明な部分が多いが、2003年スタートの予定で議論されている。本学でも、設置の方向で可能性を検討している。 |
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