時事フランス語
従来の『時事フランス語講読』の授業を振り返って:
フランスの新聞や雑誌などから、教師が記事を抜粋し、教室内で読み解いていく形の授業形態に疑問を持
ち、もっと学生が積極的に参加する方式の授業はできないだろうかと考えてみた。学生にフランス語を学ぶモチベーションを与えるにはどうしたら良いだろう
か。フランス社会、フランス文化、フランスの時事問題一般という広い領域の中で、学生の興味が一つや二つに限定されているわけはなく、さまざまな方面に向
けられているのは確かである。そこで、学生一人ひとりが関心のあるテーマを選択し、それについての多くの情報を収集し、捨象し、必要なものを取り入れ、理
解していくというプロセスを設定し、その中で、新しい発見をし、また問題意識を持ち、それを解明していくという方法をとってみてはどうかと思い、この授業
を提案する次第である。
なぜインターネットを用いるか:
学生自身が積極的にフランス研究に取り組むために、さまざまな環境を整え、指導をしなければならない
が、インターネットを使うと、情報収集の点と、創造性の点からその効果は倍増されるのではないか。具体的にいうと(1)図書館や書店で探す書誌の何倍もの
量の情報を、スピーディーに、しかもリアルタイムで得ることができる、(2)ネット上での探索(サーフ)は、イメージと字が組合わされており、快適にしか
もわかりやすいので、サーファーにとっては喜びである。(3)メール箱を設定することによって、訪問客とコミュニケーションを取ることができ、共通の話題
について世界中の人と語り合えるという「期待の地平」を開くことができる。このようにそれまでインターネットの観察者であった学生は、サイトの制作者にな
ることで、自発的に取り組める。仕事は多いかもしれないが、フランス語を学ぶ動機づけにも、また充実感にも寄与することは十分考えられる。
授業の目的:
新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネット上で、フランス語で書かれたニュースを読み、各グループが
選んだテーマに沿って、さまざまな資料を収集することにより、どのような情報誌があるのかを発見する。それを読み、理解し、さらに分析し、再編集すること
によって、それぞれのニュースソースの視点の相違を把握する。
方法:
西南学院大学のホームページに、皆さんが集め、編集したテクストをリンクさせ、世界の人に向けて発信す
る。皆さんの作成したものに対するさまざまな意見を受信する。この作業を、週一回90分の授業の中で1年間行なう。作業は段階的に6つのステップに分け、
時間の配分は随時、柔軟に考え、ステップをクリアしていく。
(1)まず記事を集める
皆さんの選んだテーマに従い、
- 新聞や雑誌などからフランス語で書かれた記事を集める。図書館には Le Monde,
L'Express, Le Nouvel Observateur, Paris Match, Elle, Les Cles de
l'actualite, などある。
- テレビやラジオなどから、関連ニュースを録音しておく。毎日France 2
のBS放送があるし、有線放送ではRFI もキャッチできる。
- インターネットで検索する。Le Monde
の一面は毎日無料で読め、バックナンバーもテーマ別に検索できる。主な新聞、雑誌はすでにわれわれの『時事フランス語』のページにリンクされている。ま
た、テーマを入力すると関連のサイトが現われる検索器、Yahoo や infoseek も活用できる。
(2)グループを組む
- 各人は、一年間じっくり研究してみたい好きなテーマを選ぶ。
- テーマが似通っていたり、関係が深いようであれば、グループを組んで、一つの大きなホームページを共
同で作り、それを下位分類し、仕事を分担することもできる。
(3)目標とすべきホームページのモデル提示
- <<Barbara est morte>>
というサイトのモデルを作ったので、これを全員で見る。その際、第一面に載せるべき必要事項をチェックする。つまり、a) タイトル、b)
なぜこのテーマを選び、このテーマについて何をしたいのかを明記する、c) 写真やイメージを載せる、d) 目次、e) メール箱の設置、である。
- 1998年度の学生が作ったサイトもモデルとして見てもらう。
(4)ウエブサイトの構築
- まず、全員が、ログイン名とパスワードをもち、いつでも、どこからでもインターネットにアクセスでき
るように、また、自分のサイトは責任をもって編集することができるようにしておく。
- サイトを作るには「クラリスホームページ」を使う。
- 記事を書き込む方法:a) 見つけた記事を自分の手で直接打ち込む。短い記事ならこれが簡単。b)
図書館の雑誌などで見つけた記事は、スキャナーで入力することもできる。c) テレビ、ラジオの録音は、トランスクリプションしなければならない。d)
インターネットで見つけた記事は、そのままリンクを張るか、または一旦セーブしておいて、それを皆さんのページに張り付けるか、のどちらかである。(注意
しなければならないのは、直接リンクを張った場合、翌日に相手先の記事がなくなり、新しいものに変わっていることもあるので、直接リンクが必ずしもベスト
とは限らない)
- 記事の一つひとつに、必ず、典拠と日付をつけること。
- メール箱の設置には、hotmail
を使う。これを使えば、個人とグループの両方でアクセスできるので便利である。
(5)自分で集めた記事の要約をする
- 自分で集めた記事に責任を持つという意味で、各々要約をする。各人、最低二件ずつ集める。
- これを、自分が作ったサイトにリンクしておく。
- 次に、その要約を基にして、フランスの各新聞、雑誌の傾向を探り、どのような視点から記事が書かれて
いるかを理解する。これをanalyse generale として、最後に皆さんのホームページにつける。
- さらに余力のある人(グループ)は、自分達の視点からの批評もしてみるとよい。
(6)評価
- 評価は年二回、全員で行なう。一回目は7月の最後の授業で、二回目は一月の最後の授業で行なう。全員
に評価表を配り、自分達のグループ以外のグループ作業を、a) プレゼンテーションの仕方、b)
資料の集め方、という観点から評価する。c)フランス語の適確さについては、教師が評価する。